けいれんとは
「けいれん(痙攣)」とは、何らかの原因によって脳神経に異常な興奮が起こり、自身の意思とは関係なく、身体がピクピクする・突っ張る症状のことです。
けいれんに伴う症状としては、呼んでも反応しない・白目をむく・唇が紫色になる・口から泡を吹くといったものが挙げられます。
一過性の短時間のけいれんの場合、後遺症が残ることはありません。しかし、長時間のけいれん、繰り返されるけいれんの場合には、早期の治療が必要になることがあります。病気が原因になることもあるため、特に初めてけいれんが起こった場合には、時間が短くても必ず医師に相談するようにしてください。
病的なけいれんと
間違いやすい症状
けいれんと間違いやすい症状としては、以下のようなものが挙げられます。区別が難しいと感じた時には、当院にご相談ください。
熱せん妄
高熱時にぼうっとして意識がないように見えたり、うわごとを言ったりする症状です。
名前を呼んだり肩を叩いた時に返事・反応があれば、けいれんとは区別して考えます。
憤怒けいれん
激しく泣いた・怒った後に、息が詰まったようになったり、身体が突っ張ってしまう症状です。「けいれん」という名称がついていますが、病的なけいれんとは区別します。繰り返すことがありますが、3~4歳くらいで自然に消失します。
ふるえ(悪寒)
風邪をひいた時、寒い日などに、体温を上げようとして身体をふるわせる症状です。
意識ははっきりしており、呼びかけると目が合い、反応します。
けいれんの原因と種類
熱性けいれん
子どものけいれんでもっとも多いのが「熱性けいれん」です。
主に、生後6か月~6歳くらいのお子さまに見られます。風邪などの発熱に伴って、意識を失いけいれんを起こします。全身が反り返ったり、手足をガクガクと震わせたり、顔色が悪くなったりといった症状を伴います。
熱性けいれんは、お子さまの約5~10%が経験するとされ、比較的よくあるけいれんです。ほとんどの場合は脳に異常を残すことはありません。遺伝的要因が指摘されており、熱性けいれんの家族歴がある場合に起こりやすい傾向があります。
発熱した日に起こることがほとんどですが、発熱後2~3日経ってからけいれんを起こした場合には、髄膜炎や脳炎・脳症などが疑われます。
注意が必要な熱性けいれん
以下のような症状がみられる場合は、脳炎・脳症などの重篤な疾患や後遺症を残す可能性があります。
- けいれんが5分以上続いている
- けいれんを短時間で何度も繰り返している
- けいれんは治まったが、その後も意識がはっきりしない
- 左右非対称のけいれんが見られる
てんかん
次に多いのが、「てんかん」です。発熱がなく、けいれんを繰り返す場合にはてんかんを疑います。症状はさまざまで、意識を失い手足を突っ張らせる・ガクガクさせるケース、片側の手足や顔がけいれんするケースなどがあります。てんかんと診断された場合には、症状を予防する抗けいれん薬の内服を行います。
多くの場合、神経細胞が過剰に反応することで起こります。ただし、脳腫瘍や頭部外傷が原因になることもあります。発熱がないのにけいれんが疑われる場合は、詳しい検査が必要なことがあるため早めの受診をおすすめします。
けいれんが起こった時の対処法
けいれんが起こった時には、落ち着いて、適切に対処することが大切です。
- まずはお母さま・お父さまが「落ち着く」ことが大切です。慌ててしまうと、適切な対処ができません。ご家族で声をかけ合い、気持ちを落ち着けてください。
- 救急要請を行います。(様子をみてから救急要請すると、止まらなかった場合の初動が遅れる可能性があります)
- お子さまの身体を、横向きにします。嘔吐した場合に窒息させないための姿勢です。
- 時計を見て、けいれんが始まった時間を確認し、メモをしてください。けいれんの様子をスマートフォンなどで撮影しておくと、診察時の判断材料になりますので、無理のない範囲で記録をお願いします。
- けいれんが5分以内に治まった場合は、呼びかけに反応すること・視線が合うことを確認してください。
けいれん時に
やってはいけないこと
舌を噛まないようにと、
布などを入れる
窒息のおそれがあります。なお、けいれんによって舌を噛み少量の出血が起こることはありますが、噛み切ることはありません。
身体を押さえつける・
揺さぶる
刺激を与えると、怪我などの原因となります。辛いお気持ちは理解できますが、押さえつけたり、揺さぶったりはせず、時間を計る・様子を見て記録することに集中しましょう。
けいれん予防のダイアップ
熱性けいれんを繰り返す場合には、ダイアップというお薬(坐薬)を使用することで、発熱時のけいれん(熱性けいれん)を予防する方法をとることがあります。
ただし、熱性けいれんを繰り返すのは全体の30~40%程度であり、回数を重ねるごとにけいれんの頻度は減っていくことが多いです。
5分以内に自然におさまるけいれんが1回だけの場合には、基本的にダイアップを使用することはありません。
何度かけいれんを繰り返した場合には、今後の予防についてご家族と相談しながら使用を検討します。