水ぼうそう(水痘)
水痘・帯状疱疹ウイルスの感染により、全身に小さな水ぶくれ(水疱)が現れる病気です。水ぶくれは頭皮にも見られます。症状が強い場合は抗ウイルス薬(飲み薬)を使用することがあります。発疹が全てかさぶたになるまでは、他の人に感染させる可能性があるため登園・登校はできません。感染力が強いため、定期予防接種がとても大切です。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、一度かかると生涯にわたる免疫を獲得できます。ただしウイルスはその後も体内に潜伏し、将来的に身体の抵抗力が落ちた時などに帯状疱疹として発症します。
症状
- 虫刺されのような赤み、水ぶくれ、かさぶた
- かゆみ
- 発熱
- 倦怠感
- 頭痛
- 食欲不振
発疹は、顔・頭・首・体幹部などに現れます。まず赤みとなって現れ、その後数日で水ぶくれに、さらに数日が経つとかさぶたに変化します。
合併症になると…
合併症としては、皮膚の細菌感染、肺炎、無菌性髄膜炎、脳炎などが挙げられます。脳炎は小脳炎が多く、歩行時にふらつく、ろれつが回らないなどの症状がみられますが、予後は比較的良好です。
原因
水痘・帯状疱疹ウイルスは、空気感染、飛沫感染、接触感染などによってまわりの人に感染します。
特に空気感染による感染は感染力が強く、感染者とすれ違うだけでも高確率で感染すると言われています。潜伏期間は10~21日(多くは14日前後)とやや長めで、発疹が出る1~2日前からすでに周囲へうつす可能性があります。
治療方法
自然経過で治癒しますが、症状が強い場合や重症化リスクがある場合は、抗ウイルス薬の内服を行います。
発症後の早期に内服ができれば、症状の改善も早まります。
気になる症状があれば、放置せずお早目にご相談ください。
登園・登校はいつから?
すべての発疹がかさぶたになるまでは、登園・登校は禁止となっています。
平均すると、5~7日ほどの期間は、幼稚園や学校をお休みする必要があります。
予防接種・ワクチンについて
水ぼうそうは、水痘ワクチンによる予防が可能です。発症が80%程度、重症化はほぼ100%、予防できます。
はしか(麻疹)
はしかは、麻疹ウイルスによって引き起こされる非常に感染力の強い感染症です。
空気感染し、免疫を持っていない場合はほぼ100%発症します。一方で一度感染すると、生涯にわたって免疫が持続するものと考えられます。
日本は2015年から麻疹排除状態にありますが、海外からの旅行者から感染が広がることもあり、今後流行しないとは限りません。ワクチンによって予防ができますので、必ず接種しておきましょう。
症状
はしかの症状は、主に以下のような経過を辿ります。
はしかの経過の流れ
カタル期(2〜4日)
- 38℃前後の発熱があるが、その後下がる
- 倦怠感
- 不機嫌(小さなお子さま)
- 咳、くしゃみ
- 鼻水
- 目の充血
- 口内の白い斑点(コプリック斑)
発疹期(3〜4日)
- 再度の発熱があり、高熱になる(二峰性の熱)
- 全身の発疹
- 倦怠感
- 不機嫌
回復期(7〜9日)
- 発疹の消失後、色素沈着が残る
そのほか、肺炎、中耳炎、脳炎などの重い合併症を伴うことがあります。
原因
麻疹ウイルスは、飛沫感染、接触感染、空気感染をします。非常に感染力の強いウイルスであり、マスク着用、手洗いといった一般的な感染予防対策では十分な予防効果は得られないと言われています。
ワクチンを打っていない・はしかにかかったことのない人は、感染するとほぼ100%、発症します。
治療方法
発熱などの症状に対する解熱剤の使用など、対症療法が中心になります。
その他、合併症の予防を目的として抗菌薬を使用することもあります。
登園はいつから?
登園は、解熱してから3日間が過ぎてからの再開となります。長ければ、2週間ほどお休みが必要になります。
兄弟姉妹が感染している場合、ご本人が元気でも、登園してもよいかを園に相談されることをおすすめします。
予防接種・ワクチンについて
ワクチンによって、95%以上の人が免疫を獲得できます。必ず、接種しておきましょう。
また、はしかになった人と接触した場合に、72時間以内に麻しんワクチンを接種すると、はしかの発症を予防する効果があると言われています。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
おたふくかぜは、正式には「流行性耳下腺炎」と言います。ムンプスウイルスの感染を原因として発症します。
耳の下にある耳下腺の炎症・腫れにより、食事をする時に痛みが出ます。主に6歳以下のお子さんに発症し、片側だけの腫れで始まり、両側に広がることもあります。無症状のこともあります。ムンプスウイルスに一度感染すると、生涯にわたって免疫が持続します。ワクチンで予防が可能です。
症状
- 耳下腺(耳の下の顎のエラのあたり)の腫れ
- 耳下腺の圧痛
- 食べ物を飲み込む時の耳下腺の痛み
- 発熱
耳下腺の他、顎下腺(下あごのあたり)や舌下腺(口の中の下のあたり)で腫れ、痛みが出ることもあります。
原因
ムンプスウイルスは、飛沫感染、接触感染によって感染します。潜伏期間は約2~3週間です。幼稚園や保育園などの集団生活の中でしばしば流行します。
治療方法
発熱、痛みなどに対する対症療法が中心となります。硬いもの、酸っぱいものは耳下腺の痛みを強めることがあるため、できるだけお控えください。
登園・登校はいつから?
耳下腺の腫れが出てから、5日を経過し、かつ全身状態が良ければ、登園・登校が可能です。
予防接種・ワクチンについて
おたふくかぜワクチンの接種により、90%の割合で免疫が獲得できます。これにより、発症や重症化のリスクが抑えられます。
なお、おたふくかぜワクチンは、任意接種となっています。
急性胃腸炎・感染性胃腸炎
(ロタウイルス、ノロウイルス)
急性胃腸炎のうちのほとんどは、細菌やウイルスの感染を原因とする感染性胃腸炎です。
腹痛、吐き気・嘔吐、下痢、発熱などの症状が引き起こされます。嘔吐・下痢・発熱は体内の水分が失われる原因となり、脱水を起こすことがあります。
症状
- 吐き気、嘔吐
- 腹痛
- 下痢(水様性が多い)
- 発熱
- 食欲不振
- 白色便(ロタウイルスの場合)
- 血便(多くは細菌性の場合に見られます)
突然の嘔吐から始まり、その後下痢がみられることが多いです。下痢症状がメインになると嘔吐はおさまります。
嘔吐、下痢、発熱など体内の水分が失われる症状があるため、脱水にも注意しなければなりません。
原因
主に、ロタウイルス、ノロウイルスの感染を原因として発症します。感染者の便や嘔吐物を介して接触・飛沫感染します。
また、カンピロバクター、サルモネラ菌、病原性大腸菌などの細菌の感染が原因になることもあります。
一般的に、ウイルス感染による胃腸炎よりも、細菌感染による胃腸炎のほうが症状が強いことが多いです。
ロタウイルス
冬~春にかけて子どものあいだで感染が流行することの多いウイルスです。お子さまでは重症化することもあり、5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因です。大人が感染することもありますが、多くの場合、軽症に留まります。
ノロウイルス
年中流行の可能性がありますが、特に冬場の流行が目立ちます。非常に感染力の強いウイルスです。
子どもだけでなく、大人にも感染します。
ロタウイルスもノロウイルスもどちらも非常に感染力が強く、便や吐物を処理する際はマスク・手袋を着用し、直接触れないよう注意してください。固形物をペーパー等で取り除き、ビニール袋で密閉してから捨てます。アルコールなどの消毒薬では効き目がありません。
アルコールが効かないため、衣類が汚れた場合は、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤を10倍希釈)で10分以上つけおき消毒した後、他の衣類と分けて洗濯しましょう。
治療方法
ウイルス性の場合は特効薬がありませんので、症状を抑えるための対症療法が基本となり、吐き気止め、整腸剤などを内服します。ウイルスや細菌の排泄を妨げてしまうため、下痢止めは基本的に使用しません。また、細菌性と判断した場合には、抗菌薬を使用します。
食事については、症状が落ち着いてから、消化の良いものを摂るようにします。
ウイルス性・細菌性のいずれの場合も、脱水にならないよう、経口補水液・スポーツドリンクなどで水分を小まめに摂取します。
登園・登校はいつから?
登園・登校は、平熱に戻り、十分な食欲があり、下痢が治まってからの再開となります。多くの場合、3~4日ほど、お休みします。
予防接種・ワクチンについて
ロタウイルス胃腸炎は、感染力が非常に強く、特に乳幼児が感染すると重症化することが知られています。そのため、現在はロタウイルスワクチンが定期接種となっており、嘔吐や激しい下痢による脱水を防ぐ効果があります。生後6週から接種可能で、お口から飲むタイプのワクチンですが、2回または3回の接種が必要です。
ノロウイルスワクチンは現在、定期接種として承認されたものはなく、予防には手洗いや消毒が重要です。