食物アレルギー
食べものを食べたあとに、じんましんが出たり、咳きこんだり、吐いてしまうことがあります。これらは「食物アレルギー」のサインかもしれません。食物アレルギーとは、特定の食べものに対して、体の免疫が強く反応してしまうことで起こります。原因となる食べもの(アレルゲン)は、卵・牛乳・小麦・果物などさまざまで、じんましん・顔の赤み・ゼーゼーする呼吸・嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。中には、アナフィラキシーといって、命にかかわる強い反応が起こることもあるため、早めの対応が大切です。一方で、卵や牛乳などは、成長とともに少しずつ食べられるようになるお子さまもいます。当院では、必要に応じて検査や食事指導を行い、お子さまに合ったサポートをしています。「これって食べものが原因かも?」と思ったときは、どうぞご相談ください。
食物アレルギーの症状
体に現れる症状
- じんましん、皮膚のかゆみや赤み
- 口の中やのどのイガイガ・ヒリヒリ、唇の腫れ
- 咳、呼吸困難
- 吐き気・嘔吐、腹痛、下痢
- 血圧低下、意識の低下、ぐったりする、失禁
- 不安感
皮膚の症状
- じんましん
- かゆみ
- 湿疹
- 顔やまぶたのはれ など
呼吸器の症状
- 咳
- くしゃみ
- ゼーゼー(喘鳴)
- 息苦しさ など
消化器の症状
- 口の中の違和感
- 腹痛
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢 など
全身の症状
- ぐったりする
- 意識がぼんやりする
- アナフィラキシー(重い全身反応)など
*アナフィラキシーとは、アレルギーの原因となるものにふれたあと、短時間で全身に強いアレルギー反応が出る状態です。皮膚だけでなく、呼吸や消火器の症状が見られます。血圧低下を認める場合は、アナフィラキシーショックと呼ばれ、命にかかわることもあります。
主に、上記のような症状が現れます。
食物アレルギーのほとんどは即時型といって、原因となる食べ物を食べて主に2時間以内(多くは食べた直後から30分以内)に症状が現れます。進行が速いので、疑った場合はすぐに対応することが大切です。
食物アレルギーの原因
子どもの食物アレルギーの原因(アレルゲン)としては、鶏卵・牛乳・小麦・木の実類・ピーナッツ・魚卵などがよく知られています。特に鶏卵・牛乳・小麦は頻度がアレルゲンとなることが多く、子どもの食物アレルギーの原因全体の約7割を占めています。
その他、フルーツ、蕎麦、甲殻類、魚などがアレルゲンになることもあります。
果物・野菜の口腔アレルギーは花粉症の可能性も
特殊な食物アレルギーとして、「口腔アレルギー症候群」があります。
生の果物・野菜、大豆などを摂取した後、唇・口内・のど・耳の奥などの痛み・かゆみがある場合には、この口腔アレルギー症候群を疑います。
さらに、口腔アレルギー症候群は、花粉症との関連が指摘されています。
卵アレルギー
食物アレルギーの中でも、乳児においてもっとも多いのが、卵アレルギーです。乳児期の食物アレルギーのうち、実に半数以上を卵アレルギーが占めています。
卵アレルギーの症状
- じんましん、皮膚の赤み
- のどのイガイガ、痛み
- 咳
- 鼻水、鼻づまり、くしゃみ
- 喘鳴、呼吸困難
- 口まわりの赤み、腫れ
主に、上記のような症状が見られます。
卵アレルギーの原因
卵アレルギーは、卵を含む食品を摂取することで発症します。ご存じの通り、卵はさまざまな料理に使用されています。特にお菓子を含む加工食品は、一見して卵が入っているかどうか分からないことも多く、注意が必要です。
なお、卵アレルギーの原因となりやすいのは、卵白・黄身のうち、卵白(白身)の方です。また一般に、加熱するほどアレルギーのリスクは低くなります。
食物・卵アレルギー検査の種類
問診では、何を食べた時に、食後どれくらいの時間、どのような症状が現れたかについて詳しくお伺いします。症状については、スマホで撮影した画像・動画などを拝見できれば、検査の選択や診断に役立ちます。
また、できれば食品のパッケージ(原材料名)なども残しておき、お持ちください。
食物・卵アレルギーの検査としては、以下のような検査が一般的に行われます。当院では、血液検査が可能ですので、ご心配の際は一度ご相談ください。また、パッチテストや食物付加試験が必要と判断した場合は、大阪赤十字病院をはじめとした実施施設へ紹介させていただきます。
プリックテスト
少量のアレルゲンを皮膚に垂らし、専用の器具で軽く傷をつけて反応を見る検査です。
数分~15分ほどで赤みや腫れの有無を確認し、アレルギーの可能性を評価します。
血液検査
採血し、血中のIgE値、好酸球の数値を調べます。アレルギーの有無を判定します。
経口負荷試験
アレルギーが疑われる食物を実際に食べてみて、症状の現れ方を確認します。
少量から開始し、症状が出現する量を確認でき、もっとも信頼性の高い検査です。
食物アレルギーの治療の考え方
食物アレルギーは、食材によってはお子さまの成長とともに自然に治ることも多く、特に乳児期に発症したアレルギーでは、その可能性が十分にあります。焦らず、安全に、医師と相談しながら少しずつ食べられるようにしていくことが大切です。治療の中心は、「症状の原因となる食べ物を、必要最小限だけ除去すること」です。経口負荷試験などを通じて、安全に食べられる範囲を確認していくことが大切です。原因となる食べ物でも症状が誘発されないのであれば、食べられる範囲までは食べることができます。自己判断で過度な除去をしてしまうと、栄養バランスを崩したり、アレルギーの克服をかえって妨げてしまうこともあるため、注意が必要です。
食物アレルギーは、一人ひとり症状や摂取可能な量が違うので、それぞれのお子さんの状態に合わせて対応していく必要があります。
エピペンの使用について
食物アレルギーによってアナフィラキシーを起こすおそれがあるお子さまには、医師の判断により「エピペン®(自己注射型アドレナリン製剤)」が処方されることがあります。エピペンは、急激なアレルギー反応が現れたときに、症状の進行を一時的に抑える応急処置用のお薬です。
喉の違和感、呼吸のしづらさ、唇や顔の腫れ、ぐったりする、意識がもうろうとするなどの症状が出た場合は、すぐにエピペンを使用し、ためらわずに119番通報してください。エピペンを使用しても、症状が完全におさまるわけではないため、速やかな医療機関での診察が必要です。
いざというときに落ち着いて対応できるよう、日頃からご家族や保育園・学校の関係者と一緒に使い方を確認しておきましょう。
スキンケアは食物・卵アレルギー発症の予防に繋がります
皮膚のバリア機能が低いと、アレルゲンが侵入しやすく、食物アレルギーの発症リスクが高くなることが分かっています。
皮膚を清潔に保つこと、お風呂あがりなどに十分な保湿を行うことで、食物アレルギーの発症リスク抑制が期待できます。
乳児湿疹、おむつかぶれやアトピー性皮膚炎の予防にも有効です。
特に卵アレルギーには
発症リスクの低下が
認められています
近年の研究により、適切なスキンケアは、食物アレルギーの中でも特に卵アレルギーの発症リスク抑制に有効であるということが分かっています。
シャワーの浴び過ぎなどは逆に乾燥肌を招くことがありますが、保湿は基本的に1日何回行っても構いません。お風呂あがりだけでなく、汗を拭いた後、おむつを替えた後など、小まめに保湿を行ってあげましょう。